我々はEコマースのインパクトについてよくわかっている。しかし、これは変化の初頭かもしれない。たくさんの企業が次々斬新なインターネットの使用方法で波及効果をもたらした。その中にD2Cという小売ビジネスモデルがあり、アメリカで最も盛んだ。このモデルはただのオンライン販売というより、Aiデータ収集や新しい広告手法による新しいブランドの仕組みだ。今回、主に【D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略】という本を元にグラフを作ってD2Cを説明したいと思う。
化粧品、スーツケース、マットレス、メガネなど、テクノロジーと程遠い場所にあった商材を扱う新興企業が、Aiやデータ分析などの高い技術力を武器にSNSを使ったマーケティングを行い、「世界観」の作り込みと巧みなストーリーテリングによって、成長している。
D2Cは消費者とダイレクトに対話し、ダイレクトに売ることで間に
広告代理店や卸売りなどを挟まないので、コストダウンできる小売モデルである。そのほかに最新テック技術によって、データ取得や
新しい広告手法を使い、よりいいブランド体験を与えられるという特徴もある。また店舗などが必要ないことで先行投資が低くなり、リスクが比較的低いメリットがある。今回主にCasperという
マットレスのD2CブランドでD2Cの特徴を説明したいと思う。
Casperのマットレスの値段は競争と比較し圧倒的な価格優位性を
持っている。一番の売れ筋は400~600ドル程度。同業他社の販売価格
(平均800~1000ドルと言われる)と比べて圧倒的に安い。
現在、全米のショッピングモールの約3分の1がテナントの撤退で 閉鎖の危機にあるとも言われている。1980年代初頭まで全米1位の小売業者であったSearsは、2018年に破産法の適用を申請。2016年に傘下に約1600もの店舗を持っていたが、現在約200にまで減っている。そんな小売業界の衰退を横目に、D2Cブランドは次々とリアル店舗を開店している。GUCCIやApple Store などの 高級ブティックが並ぶニューヨークのソーホー地区は、数えきれないほどのD2C店舗が並び、毎週のように新しい店が作られている。
前述した通りCasperはマットレスのD2Cブランドで、2014年5人で
立ち上げたスタートアップにも関わらず、わずか5年の2019年に1,100億円以上の価値のある会社になった。では伝統的なマットレスの購入の流れとCasperの購入の流れを比較してみよう。
まず、今までの流れを述べる。最初にお客さんが百貨店の広い売り場に並んだ無数のマットレスを見に行く。そこで購買参考として、実物の商品、スヤスヤ眠る子供の寝顔の広告と販売員の紹介がある。そして、購入手続きをしている時に配送料がかかると知らされるが、その時には後に引けない状況になっている。後日、配送業者が段ボールに入れられたマットを運んくる。
次に、Casperの流れを述べる。まず、現代的で洗練されたインタフェース
を持つウェブサイトにアクセスする。わざわざ店舗に行く必要はなく、
オンラインで簡潔にオーダー可能である。また他者のレビューを参照でき、100日返品無料なので、安心して購入できる。後日、マットレスがコンパクトなパッケージで運ばれてくる。
D2Cブランドはプロダクトを販売しているのではない。世界観や
ライフスタイルを販売している。現代の顧客は”機能”だけでなく、
感情を買おうとしている。例えば、Casperと伝統的なマットレスブランドとの違いを見てみよう。
CasperのCEOのフィリップ·クリムはこのように言っている:
Nikeは、運動をするアクティブなライフスタイルを魅力的なものにし、Whole Foodsは健康的な食生活を誰もが手が届くものにした。運動、
食事に加えて、睡眠がウェルネスの第3の柱になる。
Casperは、睡眠を通じて新しいライフスタイルの実現、さらに言うと、
新しいカルチャーの創出を目指している。いくつかの例を見よう:
まず、ウェルネスについて多くのテーマを特集した雑誌woollyを独自で発刊した。その上、睡眠やウェルネスについてのポッドキャスト番組も展開し、instagramでも雑誌とポッドキャストの延長として色々なウェルネスについてコンテンツを投稿しいる。睡眠の専門家
として見られるのはブランドの信頼度にとって肝心なポイントだ。
Casperのニューヨークにある旗艦店に行くと、ベッドルームを再現した巨大なブースがいくつか用意されている。そこで、普通の枕やマットレスだけでなく、犬用マットレスや寝室用照明The Glow Lightなども売られている。The Glow Lightは軽く触ればつけることができ、複数の照明をシンクロする機能もある。また、ニューヨークではThe Dreameryという昼寝専用スペースも運営している。ウェブサイトで予約すれば、25ドルで45分昼寝することができる。
Casperでは、マットレスというプロダクトではなく、”睡眠”を中心とした
ライフスタイルが売り物になっていることがわかるだろう。これで新しい
製品やサービスに広げやすく、ブランド戦略を立てやすくなる。いつか
パジャマを売ってもおかしくないほどになった。そして、製品を超え、新しい価値形態を提供することができる:雑誌で集客し広告収入を得、昼寝スペースを共有資源として使用料を請求するなど。
D2Cブランドは創業当初から大量のエンジニア、SNSマーケティングのプロを揃える。データ分析やSNSを通じたコミュニケーションを
積極的に行い、また、それぞれの施策の結果から細かくデータを取り分析していく。一定以上成長したD2Cスタートアップには、データ
サイエンティストが数十人はいる。社員の10~20%にあたる規模だ。
データ分析はマーケティングだけでなく、店舗展開の戦略や商品開発などにも使用されている。店舗の設置は、自社ブランドの名前が検索されたロケーションのデータに基づいて行われる。Casperでは15000人のコミュニティと一緒に商品開発を進んでいる仕組みが
ある。15000人のモニターのベッドにセンサーを組み込み、データを取得しながら、改善点を探し、新商品に応用する。
Casperがマットレスからスプリングを無くし、真空パックに入れて圧縮した上で小型冷蔵庫サイズのパッケージで配送している。そうすることで配送する時の面積とコストを下げることができ、購入者もより便利に扱うことができる。また、小さいパッケージから大きいマットレスに膨らむ様子が面白いので開封動画がたくさん撮られ、宣伝にもなった。ここにオンラインブランドにとって配送を配慮したパッケージの重要性が見られる。
日本でもD2Cブランドが次々立ち上げられていて、どの国でも通用できるお手本になれる。例えば、SKIOというコスメブランドはウェブサイトで肌の知識やストーリーを提供し、プチプチだけで成立する無駄なし配送専用パッケージをデザインした。また、電子レンジ
やケトルで有名になったBALMUDAによるとウェブのブランド
ストーリーや記事を読んだユーザーの購入率が確実に高くなる。
D2Cはまだまだ早い段階にあると信じ、まだやられていない分野や新しい可能性が潜在しているだろう。積極的に革命的なアイデアを開発し、当たり前を破って小売の未来を作ろう。